「虹ヶ原 ホログラフ」 浅野いにお

 地方都市を舞台に、主人公とその小学校時代のクラスメイトたちが、時を越えてお互いに絡み合う物語。「クイック・ジャパン」の連載に60ページの描き下ろしが加えられています。
 時間軸を歪ませて描かれる、まるで異界への入り口のような、静かで隠れた狂気に満ち溢れた世界は、かなり居心地の悪い空間です。読むのに気力と体力が必要でしょう。個人的には、この不自然な感覚も嫌いではありませんが、素直に好きとも言えません。微妙な感じです。

 綺麗な絵で描く、静かで無情な世界は印象的ですが、不自然すぎてつくられた世界で演技をしているような気がしてきます。作り物のようであり、リアルではないのです。読み手の間に見えない膜があるような距離感を感じます。

 また、大仰なはったりと気取って格好付けた小賢しい演出が鼻についてしまい、素直に読めませんでした。かなり乱暴な言い方ですが、完全にサブカルマンガの特徴です。しかし、青春モノの物語としてきれいにまとまっていて完成度は高いのは確かです。とりあえず、読んでみるのがいいかもしれません。人を選ぶマンガです。