「夜のピクニック」恩田陸

　様々な事情を抱えた高校生の思いが、高校の行事である「歩行祭」の中で絡み合う話。
　家庭や恋愛の問題で苦悩する青春ぷりは、個人的に苦手なものです。格好良すぎる設定に対して抵抗感を覚えてしまいます。オシャレに対するものとは少し違う気恥ずかしさなので、もしかしたら羨ましさが混ざっているのかもしれません。
　そんなダメ人間側の見方もしてしまうのですが、物語自体は素直に面白く非常に楽しめました。評判通り、読み薦めていくうちに登場人物と一緒に歩いているような気になってきます。作中に流れる臨場感、エネルギー、スピード、テンションこれらのおかげでしょう。

　何といっても物語の作り方が圧倒的に上手いです。ゴールというタイムリミットを設けたことにより、そこでクライマックスを迎えるということは、自明になっているわけですが、それでもその期待に対して完全な盛り上がり方で応えてくれます。ちゃんとした設定と舞台を用意してそれに完璧に生かしきっているのです。読んで損はないどころか、読まないと損だったかもしれません。
　これを期に、流行りものということで毛嫌いしていたものにも手を出してみたいと思います。暫くは、そんな本の読み方をしてみます。