2006年のマンガを振り返る

 ちょっと遅くなりましたが、2006年のマンガをまとめてみました。
 昨年のフォーマットに準じて、単巻(10作品)、新刊(10作品)、完結(5作品)、総合(10作品)で選んでいます。これ以上は絞れません。本当は、もっと少なくする必要があるのでしょうが、これでギリギリでした。基本的に、並び順には意味がありません。簡単な分類をしているぐらいです。
 他の人のものを見るのも楽しいのですが、趣味が合わない人のものはあまり参考になりませんし、自分との感覚の違いを意識させられるだけです。当たり前すぎる話ですが、自分で決めた結果が一番しっくりきて、心地良いものです。時間のかかる作業したが、やり出せば楽しかったです。

■2006年に1巻完結で発売されたマンガ(10作品)

 面白い作品が多くて一番絞り込むのに苦労しました。続きものではないため、気軽の読めて他人にもオススメしやすいです。リストアップしていて、上手いマンガがこんなに沢山あるのだなと幸せな気分になりました。

 大原由軌子「大原さんちのダンナさん」:この手のエッセイものは沢山ありますが、当然の事ながらマンガとしての上手さはピンきりです。そんな中で、暗くなりそうなネタを絶妙なバランス感覚で料理する様には、読んでいて感心しました。確かな技術に裏付けられたものでしょう。万人向けというわけでは無いかもしれませんが、かなり間口を広くしているのでオススメです。

 須藤真澄「長い長いさんぽ」:作者の愛猫ゆずとのお別れを描いたマンガ。愛情と切なさに満ちた素晴らしい描写が魅力です。やはりマンガとしての上手さが際立っています。

 カラスヤサトシカラスヤサトシ:奇跡の単行本化。他にはない味があります。なによりも作者自身の魅力の勝ちでしょう。地味な作品ですが、じわじわと着実に評価させてきているようので何よりです。もっと売れて欲しいものです。

 吾妻ひでおうつうつひでお日記:作者の日常を淡々と記録した日記マンガ。何も無く平坦な生活の描写は読んでいて落ち着きます。憧れます。このテンションが合わない人もいるのでしょうけど、私にはピッタリです。

 衿沢世衣子「向こう町ガール八景」:作者としては「おかえりピアニカ」に続いて2冊目の単行本です。独特の世界観を表現する技術を持った漫画家です。力の抜けて自然体な所に好感が持てます。これだけの完成度を持ったマンガなのだから、もっと売れてもいいと思います。次の単行本が発売されるのを楽しみにしています。

 藤枝奈己絵「変わってるから困ってる」:上手いのか下手なのか、計算しているのか天然なのか判断に困る変なマンガ。普通の人には受けないでしょう、でも変わっている人にはオススメです。

 後の4冊は、それぞれある程度知名度のある漫画家の短編集です。やっぱり、出来のよい短編集は密度が濃いので満足感もあります。今までの作品を読んだことがある人にも無い人にもオススメできます。

■2006年に第1巻が発売されたマンガ(10作品)

 既に完結しているものもありますが、とりあえず2006年に第1巻が発売されたマンガです。どれも次巻が楽しみなものばかりです。

 石黒正数それでも町は廻っている:本当に面白いです。予想外の方向からやってくる笑いにセンスを感じます。この雰囲気が大好きです。ネット上ではかなり評判にはなりましたが、まだまだ足りないぐらいの才能だと思います。

 宇仁田ゆみうさぎドロップ:死去した祖父の隠し子である女の子りんを育てることになった独身サラリーマンの話。設定だけみると萌えマンガにも取れますが、親との死別や育児の難しさをしっかり描いていて読ませます。また、りんの姿もいじらしかったり無邪気だったりして非常に可愛いです。まだ1巻だけしか出ていませんが、次巻が楽しみです。オススメ。

 森下裕美大阪ハムレット:大阪を舞台としたオムニバス連作。毒を含んだ優しさをもって描く人間の姿。これが森下裕美の味だと思います。容易には真似することが出来ないものです。上手すぎます。

 こうの史代さんさん録:「夕凪の街 桜の国」のこうの史代が描く家族マンガ。淡々として飄々とした作品の流れの中に、毒味を帯びた笑いがスパイスのように効いています。家族とは、こうあるべきだというような型にこだわらない自然で自由な展開をしつつも、いい話になるのが素晴らしいです。全2巻。

 植芝理一「謎の彼女X」:最高の童貞フェチマンガ。植芝理一の作品の中では間口の広い部類のマンガだと思います。まあ、それでも人を選ぶのでしょう。私は大好きです。

 笠辺哲「フライングガール」:「短編マンガ集 バニーズほか」に続きIKKIで連載されたマンガ。全2巻で完結しましたが、今作もセンスに溢れた素晴らしいマンガでした。こういう才能に出会うことこそがマンガを読む楽しみです。

 深谷陽「密林少年−Jungle Boy−」カンボジアを舞台に、10歳でポル・ポト派の兵士になった主人公アキラの物語。BJ連載作品ということで知名度は低いかもしれませんが、異常な状況下で運命を翻弄される子供たちの姿を達者な絵で描いています。これは読む価値があると思います。オススメ。

 榎本俊二ムーたち:まさに榎本俊二が天才であるという事を証明するためのような作品。私はマンガに対してこういう刺激を求めているのだと再確認しました。マンガとは、これほどまでに自由なものなのです。

 入江亜季群青学舎:学校をテーマにしたオムニバス連作。ビームで初めて読んだとき、その圧倒的な絵とストーリーの上手さに痺れさせられました。この人の描くキャラクターの色っぱさがたまりません。既に安定感すら感じますが、これからの更なる成長と活躍に期待しています。

 新井英樹「RIN」:正直な所、現在までは「シュガー」ほどの爆発力と爽快感が無いのですが、これからの展開に期待して挙げておきます。連載がスローペースの所為もあるのでしょう。

■2006年に最終巻が発売されたマンガ(5作品)

 大場つぐみ小畑健DEATH NOTE:何といってもこのマンガは外せないでしょう。色々な方面でも話題になりましたし、私も楽しませてもらいました。満足です。

 木尾士目げんしけん:本当に終わってしまったんだなといった感じです。幸せで楽しい世界でした。寂しいですが、これぐらいがちょうど良かったのでしょう。

 新井英樹「キーチ!!」:正確には子供編が完結という事になっているわけですが、再開の話は今の所ないようです。とりあえず、完結といった扱いにしています。刺激に満ちたマンガです。読んでいて新井英樹は、稀有な漫画家なのだと痛感させられました。現在は「RIN」を連載中。また「真説 ザ・ワールド・イズ・マイン」の発売もありました。何度読んでも素晴らしいです。

 羽海野チカハチミツとクローバー:個人的には、恋愛要素が絡んでくるマンガは苦手なのですが、このマンガは最後まで楽しませていただきました。ギャグのセンスも大好きです。

 久世番子暴れん坊本屋さん:書店の舞台裏を描いたマンガも完結。書店好きにはたまらないマンガでした。小ネタを盛り込みつつテンポよくギャグを展開させてくれました。やはり、どのようなスタイルのマンガでも、結局面白いか面白くないかというのは、その漫画家の持つネタを料理する技術、つまり漫画力で決まるのだと思いました。

■2006年に単行本が発売されたマンガ(10作品)

 つまりは、上記以外の好きなマンガということになると思います。10作品では、まだまだ足りないですが無理矢理絞りました。厳しい作業でした。

 オリジナリティと完成度にポイントをおいて選んだつもりです。その為、ネタとして話題になったようなタイプの作品や。私も普段面白く読んでいて好きだけどトータルで見た完成度はまた別というような作品は除きました。傾向として、どうも子供に弱く、ヌルくは無くて良い話が好きなようです。


【参考】:『2005年のマンガを振り返る