「岳」(2) 石塚真一

 山岳遭難救助ボランティア島崎三歩を主人公にして、雪山での極限状態や生死の境目、命の儚さが描かれたオムニバス連作マンガ。
 読んでいるうちにどんどん物語に入り込んでいきます。この作者は、本物です。泣けるほど素晴らしい出来です。まったく質が落ちません。
 いい話なのは確かですが、いい話すぎて物語がタルくなったりはしません。また飄々と何でも解決してしまう三歩は、まるでスーパーマンのようですが、それがご都合主義だとも感じません。安定しているのに全然退屈にならないのです。
 これらは、このマンガが薄っぺらくないからだと思います。山は判断を誤らせる。絶望と孤独を味わされる。死ぬときはあっさり死ぬ。そして死体になる。人を助ける行為とは?何故山に登るのか?それらに対して、しっかり向き合っているからこそ、このマンガには厚みがあるのです。
 余裕がある時にじっくり読みたいオススメのマンガです。